クニが神懸(かみが)かりになって以来、常にその身体から振動を発するようになったという。
芹沢氏は、クニと初対面の折に、クニの右手を自らの両手でつかんだ瞬間、「(自分の)両手はむろん、座っている両足も、胴体も、想像を超える振動に、ばらばらになっていくような、強いショックを受け始めた。両手が激しく上下動することはわかったが、身体や両足がどうなっているのか全くわからない。
座ったまま、一尺(いっしゃく、約30センチ)以上身体が畳の上に飛び上がったり、横にぶったおれて飛び上がったり、予想外の運動に、呼吸もできないほどで・・・ 肉体の限界がやってきたことがすぐにわかったが、言葉を発することも、振動する身体を制御(せいぎょ)することも、両手を開くこともできない。ただ、目で神さま(クニ)の助けを求めるのが精一杯であった」
この間、時間にしてわずか1分ほど。真冬にもかかわらず、芹沢は汗だくとなった。
「どうや、えらかったか?疲れたやろ。あんたは、ほんの1、2分ですんでよかったが、わしは、いつでもこんな振動が、身体から離れることはないのや」
クニは、次のようなことも明らかにしている。
「この振動が、わしが神であるしるしや。この振動だけは人間にはないぜ。長い間に、神様の代理を務める人が、たびたび現れ、このわして75代目やが、この振動だけは誰にもなかったんや。これから後、神と名乗る者が現れも、振動がないから偽物(にせもの)だとすぐにわかることになる」
クニは、75代目の神の化身(けしん)、すなわち救世主であることを自覚していた。
75代目の中には、釈迦(しゃか)、キリスト、中山みきも含まれるという。
だが、「わしは、宗教を作るために現れたのとは違う」というように、クニは宗教を作ってそれを売り物にしたり、信仰を強要しようという考えはなかった。頼ってくる者に対しては助け、去る者は追わずという主義を生涯貫いたのである。