そういうクニであればこそ、相手の因縁(いんねん)を霊視することもできた。
ある官吏(かんり)の家に行ったとき、そこの長男を見たクニは、
「この子の肩に、大きな犬が両足を掛けている。子どもが、頭や肩に異常をきたしているな。思い当たることはないか?」
すると、父親が顔色を変えた。
「誠に恐れ入ります。子どものために犬を飼いましたが、大きくなり過ぎて邪魔(じゃま)になり、撃ち殺して庭の隅に埋めております」と。
クニは、「そうか。犬にも魂(たましい)はあるぜ。埋めかえしてねんごろに弔(とむら)い、犬の魂にお詫(わ)びしはなれ」と。
そうすると、子どもの病気はすっかり治ったという。
クニの、病気治しの話は「無数」にある。
直接手で患部(かんぶ)に触れて治すだけではなく、言葉や視線を投ずるだけで助けたり、遠方にいる人間には、思念(しねん)で救うようなこともした。
クニは、言う
「心の患(わずら)いが、ほんまに悪い病(やまい)や」
クニは、肉体的な病気よりも、心の病気治しに重点を置いていた。
心の病気は、真心や真(まこと)のない生活に起因(きいん)するからだ。
3