クニは、女賭博(おんなとばく)として名をなしていた時期もあった。
明治27年(1894)、31歳のとき、村人と花札(花札)をやっている最中、警察に踏み込まれた。
そのときクニに「あっちに逃げろ、こっちに逃げろ」と手引きする声が聞こえた。
そのようにすると、警察には誰も捕まらずにすんだ。
それがもとで、博打(ばくち)からは足を洗うが、後から考えてみると、それが「神」との初めての出会いであったという。
それから、身体に変調をきたすようになる。
明治33年(1900)、37歳で吉永の家を捨て、鍛冶屋の井出仙蔵(せんぞう)の家に押しかけて井出家の人になった。