昭和22年秋、原子爆弾の爆発のときに放射線のほかに微量の水素も出ると、アメリカの大学教授が発表したことを知った芹沢は、井出クニに「新エネルギーは、核から出る水素ではないか?」と聞いてみたところ同意を得たという。
とはいえ、その水素は普通の水素ではなく、「鉱石の主成分である鉄の同位元素である。新元素の核から射出される元始の水素である」と芹沢はいう。
「こういう人間のつくる元始の水素を出す、もっといい鉱石が他の地方にもあるということを神様(井出クニ)から教えられている」とも記している。
終戦直後、芹沢はこの鉱石を「松根油」に浸漬して動植物の生長促成に役立つ農薬を試作したところ、驚くべき成果をみた。
松根油の中に鉱石を入れ、さらに石灰を使ってその油を固定し粉末状にして、この粉末や水溶液を植物に散布するだけで、全ての植物は「偉大な成長を遂げ、結実も増大し、穀物や根菜類果実等、味も良くなり、多収穫も間違いなかった。牛、豚、鶏の飼料に、この粉末剤を少量混ぜることで、成長や乳量、鶏卵量が増大し、飼育農家から喜ばれた」という。昭和35年に芹沢は、この成長促進剤の特許も取っている。
そればかりではない。
鉱石のエネルギーを利用した「薬」の試薬品も著しい成果を上げたという。松根油を原料として作った膏薬が万病に効いたので、注文が殺到したが「原料の松根油が、入手困難であることと、薬の許可を取得して売る意思を持たなかった」ことから使用をひとまず中止し、「今は、知人の生死にかかわるような特別な場合に限って作って上げる」としている。
また、この鉱石で処理された油は、熱に極めて強い性質に変わる特性も発見した。つまり、潤滑油や切鑿油(せっさくゆ)として驚異的な効果を発揮する。
「私は、自分の経験から、ガソリンにこの新元素の水素エネルギーを吸収した軽油を混ぜることによって、発動機の効果を高めて、ガソリンの節約と公害減少を勝ち取ることが出来ると信じているが、試験を繰り返したわけではないので、今後の実験に待つほかない」としている。
芹沢によれば、新元素を利用して金属の性質を変え、熱に強く耐久力を増大することも実験の結果出来るようになったという。
鉛70%と銅30%のメタル合金に新元素を100万台分を加えると、熱を吸収しない耐久性のある合金になることも確かめたという。昭和28年(1953)には合金の特許を取っていた。
同じような作業で、硬化アルミや硬化銅合金を鋳造し、注文に応じて製品として売ったり、普通のガラスの破片を集めて溶解したものを新元素の少量を混ぜて模造ダイヤの材料を作り、宝石商に売ったこともあった。
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